今、コールセンター業界でも、AI(人工知能)の活用が急速に進んでいます。
AIとは、人間の知的活動を再現する技術の総称であり、コールセンターにAIを導入することによって、業務効率化をはじめとして対応品質の向上・均一化による顧客満足度の向上が期待されています。
本記事では、コールセンターがAIを活用することで具体的に何が変わるのか、どのようなサービスがあるのかを解説し、実際の成功事例を通じてAI導入のポイントを紹介します。
今、コールセンターが直面している3つの課題。
多くのコールセンターは、人手不足や応対品質の維持、蓄積データの未活用といった共通の課題を抱えています。
これらの課題は互いに影響し合っており、放置すると顧客満足度の低下や従業員の離職率増加につながる可能性があります。AI技術は、これらの複合的な問題を解決するための有効な手段として注目されています。
1. 人手不足の慢性的、オペレーターの負担増。
コールセンター業界は離職率が高く、慢性的な人手不足に悩まされる傾向にあります。 採用が追いつかない状況で入電数が増加すると、既存のオペレーター一人ひとりにかかる負担が大きくなります。
オペレーターは単純なお問い合わせから複雑なクレーム対応まで幅広い業務をこなす必要があり、精神的・肉体的な負荷が重なることで、さらなる離職を招く悪循環に陥りかねません。業務の複雑化や新サービスの増加も、オペレーターの学習コストを高め、負担増の一因となっています。
2. 応対品質がオペレーターのスキルに左右されてしまう。
顧客対応の品質は、オペレーターの経験年数や知識、コミュニケーションスキルに依存します。 そのため、新人オペレーターとベテランオペレーターとでは、応対品質にばらつきが生じがちです。
品質が安定しないと、顧客満足度の低下や企業イメージの悪化につながる恐れがあります。 そのため、品質を均一化するためには継続的な研修が必要ですが、それには時間とコストがかかります。 応対品質評価を客観的かつ公平に行うことも難しく、適切なフィードバックや評価制度の構築が課題となっています。
3. 蓄積されたお問い合わせデータを有効活用しきれていない。
コールセンターには、顧客からのお問い合わせ履歴や通話音声など、「顧客の声(VoC)」と呼ばれる貴重なデータが日々蓄積されています。 これらのデータを分析すれば「顧客ニーズの把握」「商品やサービスの改善」「FAQの充実化」など様々な企業活動に活かすことができ、まさに宝の山といえるデータになります。
しかし、多くのセンターでは、音声データがテキスト化されていなかったり、分析するための人材やツールが不足していたりするため、膨大なデータが手つかずのまま埋もれているのが実情です。 結果として、貴重なビジネスチャンスを逃しているケースも少なくありません。
AIによって実現できるコールセンター業務5つの効率化
AIソリューションの導入は、コールセンターが抱える課題を解決し、業務全体の効率化を実現します。
単純作業の自動化からオペレーターの応対支援まで、AIは多様な形で業務プロセスに介入し、生産性の向上に貢献します。 ここでは、AIによって可能になる具体的な効率化の手法を紹介し、それぞれのソリューションがどのように機能するかを解説します。
1. ボイスボットが電話の一次対応を自動で代行
ボイスボットは、音声認識・音声合成技術を活用した音声対話型のAIロボットです。 顧客からの電話に自動で応答し、用件のヒアリングや簡単な質疑応答を行います。
例えば、資料請求の受付や予約変更といった定型的な手続きをボイスボットが完結させることで、オペレーターはより複雑なお問い合わせに専念することができます。 従来のプッシュ操作によるIVR(自動音声応答システム)とは異なり、自然な会話形式で対応できるため顧客のストレスも軽減されます。 このボイスボットにより、待ち時間の短縮や「溢れ呼」の削減にも活用することができます。
溢れ呼とは…?放棄呼や待ち呼との違いから原因、効果的な対策まで解説。
2. チャットボットによって24時間365日お問い合わせ対応
チャットボットは、Webサイトやアプリケーション上でテキストによるチャット形式のお問い合わせに自動対応するプログラムです。 簡単な質問であれば、顧客はオペレーターにつながるのを待つ必要がなく、24時間365日いつでも自己解決が可能になります。
これにより、コールセンターの営業時間外でも顧客サポートを提供でき、顧客満足度の向上に貢献します。 チャットボットには、決められたシナリオに沿って応答するタイプと、AIが対話内容から意図を汲み取って柔軟に応答するタイプがあります。 目的に応じてタイプを使い分けることが利用します。
3. 通話内容をリアルタイムでテキスト化して自動要約
音声認識AIを活用することで、顧客とオペレーターの通話内容をリアルタイムでテキスト化できます。 これにより、オペレーターは通話中にメモを取る必要がなくなり、顧客との対話に集中することが可能です。
さらに、通話終了後にはAIが会話の要点を自動で要約し、応対履歴としてシステムに登録します。 この機能は、オペレーターの大きな負担となっている後処理業務(ACW)の時間を削減し生産性を向上させます。 テキスト化されたデータは、コンプライアンスチェックや応対品質の分析にも活用できます。
4. オペレーターへの回答候補をAIが提示
オペレーター支援(エージェントアシスト)機能は、AIが顧客との対話型インターフェースをリアルタイムで解析し、FAQやマニュアルなどのナレッジベースから最適な回答候補をオペレーターの画面に提示する仕組みです。 この支援により、オペレーターは必要な情報を探す手間が省け、迅速かつ正確な回答が可能となります。
特に、経験の浅い新人オペレーターでもベテランと同等の品質で対応できるようになるため、教育期間の短縮や即戦力化に貢献します。 結果として、保留時間の短縮や応対品質の平準化が実現します。
5. FAQシステムを最適化しお客様自身での解決を促進
AIはFAQシステムの改善にも活用されます。
コールセンターに寄せられるお問い合わせデータをAIが分析。顧客がどのようなキーワードで検索し、どのFAQページを閲覧しているかを可視化します。
この分析結果に基づき、顧客が求める情報にたどり着きやすいようにFAQの構成を見直したり、不足しているコンテンツを追加したりすることが可能です。 また、AI搭載の検索エンジンをFAQサイトに導入することで、自然な文章での検索にも対応できるようになり、顧客の自己解決率が向上します。 これにより、コールセンターへの入電数そのものを削減する効果が期待できます。
コールセンターにAIを導入する4つのメリット
コールセンターへのAI導入は、単なる業務効率化にとどまらず、多くのメリットをもたらします。
オペレーターの負担軽減による労働環境の改善、応対品質の標準化、膨大なデータの戦略的活用、そして顧客満足度の向上など、その効果は多岐にわたります。 ここでは、AI導入によって得られる代表的な4つのメリットについて具体的に解説します。
1. オペレーターの業務負担を大幅軽減
AIが定型的なお問い合わせ対応や後処理業務を代行することで、オペレーターは本来注力すべきである複雑かつ付加価値の高い業務に集中できます。 ボイスボットやチャットボットが一次対応を行い、通話の自動要約機能が事務作業を削減するため、オペレーター一人当たりの業務負荷が大幅に軽減されます。
これにより、精神的なストレスが緩和。働きやすい環境が整うことで、従業員満足度の向上や離職率の低下にもつながります。 結果として、採用や教育にかかるコストの削減も期待できるのです。
2. AIによって均一で質の高い顧客対応を実現
AIの回答支援システムは、オペレーターのスキルや経験に関わらず、常にナレッジに基づいた最適な回答を提示します。
これにより、属人化しがちだった応対品質のばらつきをなくし、センター全体で均一かつ質の高いサービスを提供できるようになります。 特に、複雑な商品知識や頻繁に変わる手続きなどを扱う業務において効果を発揮し、誤った案内をするリスクを低減させます。 新人オペレーターでも自信を持って顧客対応にあたれるため、早期の戦力化と教育コストの削減にも貢献します。
3. 膨大な顧客データを分析しサービス改善に活用
AIは日々蓄積される膨大な通話データや応対履歴を分析し、顧客のニーズや不満やお問い合わせの傾向などを可視化します。 これにより、感覚的にしか捉えられなかった課題をデータに基づいて特定し、具体的な改善策を立案することが可能です。
例えば、特定の製品に関するお問い合わせが多い場合は製品開発部門へフィードバックしたり、FAQコンテンツを充実するなどの改善アクションにつなげることができます。MAツールと連携すれば、顧客インサイトをマーケティング施策に直接活かすこともできます。
4. 24時間対応ができるようになり顧客満足度が向上
チャットボットやボイスボットを導入することで、コールセンターの営業時間に縛られることなく、24時間365日いつでも顧客からのお問い合わせに対応する体制を構築できます。
顧客は深夜や早朝でも、自分の都合の良いタイミングで疑問を解消したり、手続きを完了させたりすることが可能です。これにより、顧客の利便性は飛躍的に向上します。 また、電話がつながりにくいといったストレスから解放されるため、企業に対する信頼感や満足度の向上に直結します。
AI導入前に心得ておく3つの注意点
AI導入は多くのメリットをもたらす一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。 事前準備や検討を怠ると、期待した効果が得られないばかりか、余計なコストや混乱を招く可能性もあります。
ここでは、AI導入を成功に導くために、プロジェクト開始前に必ず押さえておくべき3つの重要なポイントについて解説します。
1. AIに学習させるためのデータの準備に時間が必要になる
AIシステムが高い精度で機能するためには、その思考の土台となる大量の学習データが必要です。
過去のお問い合わせ履歴・応対マニュアル・FAQといったデータを収集し、AIが学習しやすい形式に整理・加工する作業が必要となります。 特に自社の業務に特化した独自のAIを構築する場合、このデータ準備に相応の手間と時間がかかります。 データの質と量がAIの性能を直接左右するため、導入プロジェクトの初期段階で、どのようなデータをどれだけ用意できるかを慎重に見極める必要があります。
2. システム導入と運用に一定のコストがかかる
AIシステムの導入には、ライセンス料やサーバー費用などの初期コストが発生場合があります。 クラウド型サービスを利用する場合でも、月額利用料という形で継続的な費用が必要です。
また、導入後もAIの精度を維持・向上させるためのチューニングや、新たなデータを学習させるメンテナンス作業など、運用コストも見込んでおく必要があります。これらのコストを上回る効果、つまり投資対効果(ROI)を事前にシミュレーションし、費用対効果を十分に検討した上で導入を決定することが求められます。
3. 複雑で感情的な対応は依然として人が担う必要あり
AIは定型的な業務やデータ分析を得意とする一方、顧客の複雑な感情を汲み取り、共感を示しながら柔軟に対応することはまだ不得意です。 特に、深刻なクレームや個別の事情が絡むイレギュラーな相談や、人間のホスピタリティが求められる場面では、オペレーターによるきめ細やかな対応が不可欠となります。
AIに任せる業務と人が担うべき業務を明確に切り分け、両者が協業する体制を構築することが重要です。 AIはあくまでオペレーターを支援するツールであり、すべてを代替するものではないという認識が大切です。
自社に合ったAIコールセンターシステムを選ぶ3つのポイント
AIコールセンターシステムやツールは数多く存在し、それぞれに特徴があります。 自社の課題解決に本当に役立つシステムを選ぶためには、いくつかの比較ポイントを押さえることが重要です。
ここでは、多くの企業向けサービスの中から自社に最適なシステムを選び出すために、注目すべき3つのポイント(機能・連携性・サポート体制)について解説します。
1. 解決したい課題に特化した機能が備わっているか
AIコールセンターシステムを選定する上で最も重要なのは、自社が抱える課題を解決できる機能が備わっているかという点です。
例えば、「オペレーターの応対品質を均一化したい」のであれば回答支援機能やAI対応。「有人対応数を削減したい」のであればFAQ最適化やチャットボット機能、AIによる一次対応代行が有効です。 まずは自社の課題を明確に定義し、その課題解決に直結する機能を持つシステムに絞って比較検討を進めることが、導入成功への近道となります。 導入目的に合っているかという観点で「最適な機能を選ぶこと」を見極める必要があります。
2. 現在使用しているシステムとスムーズに連携できるか
多くのコールセンターでは、既にCRM(顧客情報を管理するシステム)やCTI(コンピュータ・電話・FAXを連携するシステム)などの基幹システムが導入されています。 新たに導入するAIシステムがこれらの既存システムと円滑に連携できるかは、業務効率を左右する重要な要素です。
データが分断されてしまうと、二重入力の手間が発生したり、一元的な顧客情報管理ができなくなったりします。 API連携の可否や連携実績などを事前に確認しましょう。
3. 導入後のサポートやメンテナンス体制は整っているか
AIシステムは導入したら終わりではなく、その効果を最大限に引き出すためには、継続的な運用と改善が欠かせません。
そのため、導入ベンダーのサポート体制が充実しているかは重要です。 導入時の初期設定支援はもちろん、運用開始後のレポーティングや効果測定、AIの学習データ追加や精度チューニングに関するアドバイスなど、伴走型のサポートを提供してくれる企業・サービスを選んだ方がいいでしょう。
万が一のトラブル発生時に迅速に対応してくれるかどうかも含め、長期的な視点でパートナーとして信頼できるかを見極めましょう。
コールセンターをAIで自動化。クラウド型CTIコールセンターシステム「BlueBean AI」
クラウド型CTIコールセンターシステム「BlueBean」は、自動化対策に有効な機能を標準で数多く搭載しています。
例えば、溢れ呼時の一次対応をAIが代行、文字起こしによる対応履歴(有料オプションになります)の記録が挙げらます。人手不足・業務効率化といった課題を自動化の側面で解決していきます。
*BlueBean AIのご活用方法をこちらで紹介しています
まとめ
コールセンターが抱える人手不足や品質のばらつきといった課題に対し、AIの活用は有効な解決策となります。
ボイスボットによる電話応対の自動化、AIによる通話内容の要約、オペレーターへの回答支援など、多様なサービスが登場しています。
これらのAI技術は、オペレーターの負担を軽減し、より付加価値の高い業務への集中を促します。 導入を成功させるためには、自社の課題を明確にし、機能や既存システムとの連携性、サポート体制などを比較検討して最適なツールを選ぶことが重要です。 生成AIの技術進化も著しく、今後コールセンター業務におけるAIの役割はさらに拡大していくことが予想されます。